ラノベ上がりの今期アニメ2作



 仕事に関連することを書くのは差し支えるので、仕事関連で読んだ書籍や新たに勉強した内容以外のことで雑感を記すとすれば、最近チェックしているアニメ、コミック、小説についてだろう。

 アニメの話題が一番ブログの趣旨に合致しているので、これについて書こう。

チェック中のラノベのアニメ化



 今期は、チェックしていたライトノベルが2本アニメ化した。ノベルゲームと同様、ライトノベルも、限られた余暇から読書時間を捻出しなければならないため、内容がない又は薄い作品を回避し、読むに耐えるレベルのタイトルに絞って読んでいる。現在チェックしているのは7作品なので、その内の2つがアニメ化というのは良い確率だ。


 ちなみに、残り5つのうち3つは既にアニメ化を果たしているので、チェックしている作品のうちアニメ化していないものは2つである。そのうち1つはアニメ化が決まったらしいので、アニメ化未定なのは1作品のみ。これも、作品性とエンタテインメント性は高いので、もう少し原作が進めばアニメ化しておかしくない。


 アニメ化した作品は、原作を読んで内容を知っているにもかかわらず、アニメも気になるのが性だ。一つには、好きな作品をアニメで再度楽しみたいというのもあるが、1コンテンツのマルチユース、他メディア展開の施策として各企画担当者が出してきた回答(アウトプット)を楽しんでいるという面が強い。


 コンテンツ事業の投下資本回収と収益性向上の巧拙は、1つのコンテンツをどれだけ使い倒してユーザーからカネを搾り取れるか、にかかっている。ユーザーが事業者に踊らされるという無様な様相を晒さないためにも、事業者サイドのソロバン勘定を冷静に観察し、実際のインプリメンテーションの巧拙を高みから見物するくらいの気持ちを持って作品に当たるのが、ユーザーとしてのあるべき姿であろう。

2作品の残念なアニメ版



 アニメ化したライトノベルは、電撃文庫レーベルから出版されている蒼山サグ作・てぃんくるイラストの『ロウきゅーぶ!』と、同じく電撃文庫から杉井光作・岸田メルイラストの『神様のメモ帳』である。






 ちなみに、R15も1巻は面白く、途中までフォローしていたが、その後の失速が目に余り、フォローを中止した。これも今期アニメ化したようだが、鳴かず飛ばずのようだ。


 ロウきゅーぶ!神様のメモ帳、それぞれまだ4回、5回といったところなので今後の展開によって変更の可能性はあるものの、現時点での感想を言うと、2作品ともアニメ化は残念な結果に終わっている。


 それぞれの残念さには違いがあるが、共通したコンテンツ業界の弱点が垣間見えるように思われるので、これにつき指摘したい。

ロウきゅーぶ!



 てぃんくるのキャラデザのままバスケットボールをプレイするという動画は、およそありえないことである。もっと言えば、ロウきゅーぶ!の作品内容にてぃんくるの絵は合わない。


 おそらく、電撃小説大賞の銀賞受賞作を確実にマネタイズするため、絵だけでも一定の購買者が見込める人気絵師てぃんくるを担ぎだしたというのがアスキー・メディアワークスの企画者サイドの実態だろう。


 実際、それもあって販売にはずみがついたんだろうが、やはりアニメ化にあたってはこの不自然感を糊塗することはできなかったと見える。原作を参照した作画が困難となった結果、アニメのキャラデザは大幅に変更されるに至った。


 原画は元々の選択を誤ったことによるものとして仕方がないとしても、アニメのシナリオがまた残念な内容となっている点はいただけない。ただのロリコンむけ深夜アニメに成り下がっている。原作はもう少しちゃんと伏線張って見せ場を作ってというふうに作られているのだから、この点は尊重した作品であって欲しかった。


 そうすればバスケシーンもあんなおざなりな作画で済まされるはずもなく、きちんとしたバスケ漫画としてもみられるような作品とすることができたはずである。少なくとも原作者はバスケの戦術面などをよく捉えた原作を書いているのだから、それを活かしたアニメ作品として世に送り出していたら、一見萌えアニメのように見えて実は本格派バスケアニメ、という新しいアニメポジションを築けたはずである。


 こういうポジションを築いた作品がその後のグッズ販売やその他の収益化を進めるのに非常に有利なことは、言うまでもない。原作が悪くなかっただけに、アニメ化という収益化のチャンスを生かしきれなかった企画者の怠慢は非常に残念であると言わざるを得ない。



神様のメモ帳



 本作品の原作は、杉井光氏の渋谷系探偵小説である。杉井氏の原作の文学的な完成度は高く、少なくとも一般的なライトノベルの範疇は超えていると言ってよいほどである。また、岸田メル氏のキャラデザも極めて秀逸で、その意味で本作品の原作の完成度は、ライトノベルの分野では極めて高いものがある。


 それだけに、アニメ化にあたっても、その質が維持されれば、極めて高い評価を得る作品になるだろう、そう期待していた。


 実際、作画は原作を損なうことなく、高いレベルの作画を実現しており、この点は評価したい。


 けれども、脚本がいけない。この作品は推理小説であり、推理小説はトリックが重要な見せ場である。トリックを効果的に見せるためには、その前の伏線や小道具などをしっかり視聴者に印象づけなくてはならない。


 しかしながら、この脚本は妙に上っ面だけをなぞったような薄っぺらい脚本で、原作の深みを全く表現できていない。せっかく推理探偵小説をアニメ化するのだから、もっと1エピソードごとに丁寧に描くべきだ。その結果、1クールで3編くらいの作品しか放映できなかったとしてもよいではないか。作品の評判が上がればDVD・グッズ収入も期待でき、2期の芽も出てくる。1コンテンツでより多くの収益を生み出せるではないか。


 また、本件をアニメ化するにあたって、日本コカ・コーラにパートナリングの話を持って行かなかったのだろうか。コカ・コーラマーケティングチームは世界でも有数で、色々な実験的なマーケティングを試みることで有名である。日本ではネタとして取り上げられることの多いドクペだが、米国ではメジャーブランドであり、皆好んで飲んでいる。日本でもコストコで大量販売を行っており、今勢いのあるアニメファン層に訴求すれば、日本での販売にも火がついた可能性がある。しっかりしたシナリオで人気が出れば、当然、タイアップでグッズをおまけに付けたりなどしてドクペの販促もできたはずであり、諸々考えると、どう考えても惜しい。




 コンテンツはなかなか儲からない、とよく言われる。しかしそれは、コンテンツをより良く仕上げ、そこから最大限の収益を産み出そうとする仕掛け側の構想力の不足によるところが大きいのではないか。


 常に収益化の芽を必死に探している他業界の目から見ると、そう感じてならない。