ラブラブル感想 SMEEの凄さについて



放置していた間もいくつも作品を楽しんできましたが、さぼってました。
まあ、いいんです、自己満足なつぶやきなので。



ラブラブル感想



ということで、SMEEから2月25日に発売されました、“ラブラブル〜Lover able〜”、もう英語からして意味不明ですね。この作品(特に花穂ルート)を楽しんだ後には、おそらく真意は“Lovable”なんだろうな、ということが分かります。
これじゃタイトルにならねぇーぞ、ってことで日本語の語呂を合わせに来たんでしょう。
この手のことはよくあって、例えば「ぱれっと」さんが2008年に発売した“さくらシュトラッセ”、あれもドイツ語の読みをタイトルに合うようにいじりました、という話を聞いたことがあります。ドイツ語分からないので検証できませんが。。。




ラブラブルのすごさについて



なにはともあれこのラブラブル、何がすごいかというと、投資効率を最大限に高めようという会社の並々ならぬ決意が見て取れる作品なのがすごい。もうそれを隠す気などハナからないところがすごい。


この手の作品を世に出すためにはだいたい2000万円くらいかかるという話を聞いたことがありますが、このうち制作費に当てる部分を、この作品の「目的」にフォーカスして使おうという方針が、作品全体を貫いているんです。


つまり、「ヒロインとのいちゃラブ」をユーザーに楽しませる、ということだけを考えて、ここに制作費を集中投下した作品といえます。
どういうことかを詳しく述べましょう。



ベタな設定



まず、ヒロインはお姉さんキャラ、不思議系ボクっ娘、天然系美少女、ロリ系後輩、そして妹という典型的なキャラクター造形、舞台もレストランのバイト先っていう、むかしむかしからの伝統芸能みたいな設定になっていて、ここでおかしなひねりを入れることはしない。

脇役の省力化



次に、脇役の絵の少なさ。野球部員やざますおばさんなど、おもろいキャラがいるけれども、一切立ち絵なし。バイト先の人も名前のないウェイトレスが平気で出てくる。結構色々話に絡んでくるビッチ姉すら立ち絵なし。ダメ押しにつぐみシナリオで結構重要な役どころを演じる奈緒にいたっては、良くわからん斜めの立ち絵一枚でシリアスシーンもこなす押しの強さ。
脇役なんぞに金をかけられない、という割り切りが素晴らしい。


極めつけは男性キャラ。巷では「男性キャラの絵がヘタ」などという、見当違いの感想も聞かれるが、これは原画一枚ですべてのシーンをこなせるように、敢えてこんな絵にしているのだ
店長と流星の顔のパーツが単純なパーツで構成され、真ん中に寄っているのは、こうしておけばパーツを上下左右に動かす(差分作成)だけで表情が作れ、別の絵を用意しなくてすむからだ。
絵を一枚にする、という方針がまずあって、それを不自然に見せないための絵が求められた結果、あのような絵になった、というのが実際のところだろう。



開発陣がやりたかったこと



ここまで開発陣がコストを削ってやりたかったことは何か?


それは「ヒロインとのいちゃラブ」を実現することに徹底的にこだわったことだろう。


まず、どのヒロインの服装もとても凝っている。フルーティアの制服のフリフリっぷり、前にどこかの絵師から聞いたが、フリフリの服っていうのは書くのにすごく時間がかかるらしい。フルーティアの制服だけでなく、普段の服もとても凝った作りだ。


そしてその服装がすべてのヒロインについてユーザーが選択できる。これはそれぞれの絵柄ごとに差分を用意しなければいけないことを意味するので、とても大変な作業だ。


また、どのヒロインも髪型が選べる。これもそれぞれの絵柄ごとに差分を作る必要があることになる。よく分からないが、服装と髪型の組み合わせ(4通り)でおかしなことがおこらないかのバグチェック等も色々と大変だったことだろう。


さらに文脈とは全く関係の無いコスプレ服が用意されているにいたっては、親切設計というほかない


さすがにそれぞれをやらないと絵がオープンにならないという、やり込みを求めるゲームでないことはSMEEも自覚していて、ヒロインをクリアすると差分がオープンになる仕組みになっている。このあたりのさじ加減もよろしい。


それと、もう一つ強調しておきたいのは、キャラと絵だけに力をいれればユーザーが萌えるなどと勘違いしていない点が素晴らしい。先ほど言ったように、キャラ造形や設定はめちゃくちゃベタなんだが、シナリオとセリフは実は相当がんばっている。


まず、ヒロインと仲良くなって告白にいたるまでの描写は、この手の作品には見られない丁寧さがある。ヒロインごとにとても丁寧に、相手を意識しているところや恥ずかしがっているところを見せたり、という心遣いをしているので、唐突感や違和感が少ない。これに一役買っているのは、携帯電話という小道具だろう。


また、初めてのシーンへの流れも、やたらとリアルだ。確かにこういう流れでバイト先の女の子を落としたよな、なんて思わず自分の過去を回想するくらい、リアルなんである。


そして、見せ場のいちゃラブにいたっては、このセリフ回しや舞台設定、このシナリオライターは四六時中こんなことばっかり考えてんだろうなコノヤロウ、というくらい甘々コテコテ。



開発陣のいちゃラブに対する考え方



サイトでもうたっているが、いちゃラブイベントがあればそれでいちゃラブになるわけじゃない。大事なのは、周辺の仕掛けで「いちゃラブ感」を高める、ここがポイントなのだ。これにって各イベントの破壊力は断然増している。これにより、自分のお気に入りのキャラを攻略している最中は、脳髄が溶けるような感覚を味わうこと間違いなしである。おそるべし、ラブラブル。


しかも、ヒロインごとにちゃんと終盤に、ヒロインの過去を交えたちょっといい話を挟んでくるところも、なかなか憎い。少しとってつけた風のものもあるけど、主人公とヒロインがこれからも仲良くやっていくためにキーとなるようなエピソードがちゃんと挟まれているところは、作品を平板なものにしないために大事な要素だ。


絵による描写とシナリオまわしは、ヒロインへの愛と作品への共感を生むために不可欠な要素であることは言うまでもない。でも世間では、某「いとう○いぢ」を抱えるブランドのように、絵は第一級なんだがシナリオが全然これについてこれないなんてところが山ほどある。
この両方を高めるような作品を作ろうとすると、制作費が高騰してしまって投資回収が図れないことになる、というのは、もう映画でもゲームでも、コンテンツ制作が抱える大きな課題だ。


ラブラブルはこの課題に、選択と集中によって回答を出した。いちゃラブの演出とユーザーの共感に直接つながる部分にはしっかりこだわり、世界観の確立やリアリティを高めるための演出となる脇役や男性キャラ、背景には徹底してコスト削減を図る。


このメリハリと調整の妙こそが、ラブラブルの真骨頂である。


したがって、この作品に対して、「男性キャラがおかしい」とか、「奈緒ちゃんの立ち絵がおかしい」とか、「美冬エンドを用意しろ」とかいうのは、この作品の狙いと本質を理解しない暴論である。そんなところはとっくにこの作品は捨てている。
開発費用の中でユーザに最大のいちゃラブゲームをお届けするための冷徹な計算が、この作品には貫かれている。



オススメは「つぐみ」



ちなみに、僕の一番のおすすめキャラは、断トツトップで「姫野つぐみ」ちゃん。どちらの髪型もたまらないし、イベントの盛り上げっぷりももう尋常じゃない。先輩大好きなつぐみちゃんキャラと、終盤に見せる包容力の片鱗、そしてその思いに隠された過去、最高です。この手のいちゃラブメインのゲームをしていて脳髄が溶けるような感覚を味わい、そのあと何時間かもどってこれない体験をしたのは、十ウン年の美少女ゲーム歴の中で初めてかもしれない。